民事再生を申し立てた場合の得意先対応のポイント

 事業再生支援グループの弁護士の眞下寛之です。
 民事再生の申立てをした場合、顧客(得意先)に対してどのように対応すればよいのでしょうか。

1 想定される得意先の反応

 民事再生の申立てをした場合、マスコミ等で申立てをした事実が報道されることがあり、そのような報道に不安を感じた得意先が、取引の打ち切りを申し出てくることがあります。
 しかし、得意先との取引を継続することは、民事再生を成功させる上で極めて重要なポイントになります。得意先との取引がなくなってしまえば、事業継続することは難しくなり、営業活動により得られるキャッシュフローで再生計画に定めた弁済を行っていくこともままなりません。

2 得意先に対するご説明

 従って、民事再生を申し立てた会社は、できるだけ速やかに、重要な得意先に個別に連絡し、民事再生を申し立てたこと、今後も事業継続していく予定であり物・サービスの提供もこれまで通り行っていくこと等を丁寧に説明することが重要です。得意先は、取引対象である物・サービスがこれまで通り供給されるのかに不安を感じる場合が多いので、丁寧な説明によってその不安を解消することができれば、取引継続の可能性は高まるでしょう。
 なお、得意先との間で締結した取引基本契約書の中に、「当事者の一方が民事再生の申立てを行った場合には、他方当事者は契約を解除できる」旨の条項(いわゆる倒産解除条項)が規定されている場合があり、得意先がこのような条項を根拠として取引基本契約を解除することがあります。しかし、この倒産解除条項は、民事再生法第1条の趣旨に反して無効であると判示した判例がありますので(最高裁判所平成20年12月16日)、得意先に対しても、この点を前提としつつ、翻意を促すことが考えられます。

3 事業再生のために

 再生債務者にとって、事業を継続し再生を実現するためには得意先との取引を維持することが必要不可欠です。従って、得意先に対するご説明等は、できる限り早期に対応することが適切であるといえます。