コロナ禍における債権者集会のあり方

 債権者説明会と債権者集会
事業再生支援グループの弁護士の眞下寛之です。
民事再生手続において、再生債権者がいずれかの場所に集まって再生債務者及び申立代理人弁護士から説明及び情報提供等を受ける機会としては、①再生債務者が主催して日時や開催場所を設定し、債権者に対して再生債務者の状況や民事再生手続に関する説明及び情報提供を行う「債権者説明会」と、②裁判所が再生計画案の付議決定とともに、再生債権者が議決権を行使するための方法として開催することを決定する「債権者集会」の2種類があります。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、たくさんの人が1つの場所に集まる行事・イベントは自粛される傾向にあります。債権者説明会や債権者集会も、案件によっては多数の債権者の参加が見込まれる場合があります。そこで、このブログでは、債権者説明会や債権者集会を、TeamsやZoom等のオンライン会議システムを使って開催することができないのか、考えていきたいと思います。
なお、「債権者説明会」と「債権者集会」とは、主催者が再生債務者なのか裁判所なのか、及びどのような目的で行われるのかが異なり、その設営方法等も異なりますので、それぞれの概要について簡単に説明しつつ、区別して論じていきます。

1 債権者説明会

 再生債務者が主催して開催される債権者説明会には、①申立直後に開催される債権者説明会、②再生債務者が事業譲渡や会社分割をする場合に、債権者に対する情報提供のために開催される債権者説明会、③再生計画案が付議された後に、裁判所の債権者集会に先立って開催される債権者説明会などがあります。
 ①は、再生債務者が民事再生を申し立てた直後に、債権者に対し、申立てに至る経緯、再生計画案の策定に向けた作業内容の概要、再生債権の取扱い、民事再生手続概要や手続進行のスケジュール、今後の取引継続のお願い等について、資料を用いて説明するものです(監督委員が同席することが通例となります。)。
 ②は、再生債務者が事業譲渡を行うに際し、譲渡対価の金額、承継対象となる資産・債務の範囲、スケジュール等が再生債権者に対する弁済原資や弁済率を決める上で重大な要素になることに鑑み、再生債権者に対して、事業譲渡を実施することの必要性、スポンサー(事業譲受人)の選定過程の適正性、事業譲渡の内容、譲渡対価の相当性、事業譲渡が実行された場合に見込まれる再生計画案の概要等を説明するものです。会社分割の場合も同様となります。
 ③は、再生債権者が再生計画案の内容を理解し、以下に述べる3の債権者集会で適切に議決権を行使できるようにするため、再生債務者が債権者集会に先立って開催し、再生計画案の内容等を説明するものです。
 これらの債権者説明会は、①については多くの裁判所において開催する必要があるものとされており、②及び③については各地の裁判所によって取扱いが異なるという違いはありますが、開催方法については再生債務者が適宜に決定することができると考えられます。近時の新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多人数が集まる集会の開催についてはできる限り避けることが適当であるという考え方に立てば、再生債権者にその開催方法について十分な説明をした上で、オンラインで実施することも可能であるものと思われます。ただし、実際に債権者説明会を開催するにあたっては、再生債権者に対して適切に情報提供する必要があるという観点から、裁判所及び監督委員との間で具体的な手続及び方法について協議する必要があるものと考えられます。
 なお、再生債務者は、債権者説明会を開催した場合には、その結果の要旨を裁判所に報告しなければならないものとされています(民事再生規則61条2項)。

2 債権者集会

 裁判所が再生計画案を決議に付する旨の決定をした場合、議決権行使の方法として、(ア)債権者集会を開催する方法、(イ)書面等投票(書面その他の最高裁判所規則で定める方法のうち裁判所の定めるものによる投票)を実施する方法、(ウ)これらを併用する方法があるものと規定されています(民事再生法169条2項各号)。
 従って、新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、多人数が集まる集会の開催を控えるという考え方による場合には、上記(イ)の書面投票が実施されることになるものと思われます。
 なお、上記(イ)については、民事再生規則上、書面により投票する他に、電磁的方法によって投票することが認められていますが(90条2項2号)、具体的にどのような方法によって実施するかについては未だ定められておらず、将来の可能性を考慮したものにとどまり、オンラインで実施することが明文で認められているわけではないものと考えられます。