リース会社にリース料の支払いを猶予してもらうことはできますか。

 こんにちは。
事業再生支援グループメンバーの公認会計士・税理士の林幹根です。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で売上が激減し、業績が急激に悪化した企業が多く見受けられます。
 そのような企業は地代家賃の賃借料や仕入代金の支払い条件の変更、新型コロナウイルス対応特別融資、各種助成金・給付金の取得などを活用して、資金繰りの悪化に対応し、資金ショートを回避してきたかと思います。
 このような資金繰りが悪化した企業において、銀行や信用金庫などの金融機関からの借入は、返済金額や返済期間など返済条件の変更、いわゆるリスケジュールを行った企業も多く見受けられました。
 さて、上記のような対応をとってもまだ資金繰りが改善されない企業のなかでリース会社に対するリース料の支払いについて支払い猶予を受けられるものかどうかといったご質問を受けることがあります。
 この記事を読んで頂いている方も同じように、「リース料も支払猶予してもらいたいけど、対応してもらえるのかな?」と悩んでいませんか?
 先に結論を言ってしまいますが、実は、ここで解決する内容を理解してリース会社に依頼すれば、リース料も支払猶予してもらえる可能性があります。
それでは、リース会社にリース料の支払いを猶予してもらうことはできるかどうかについて説明します。

1 結論

リース料も支払い猶予を受けることができます。

2 解説

(1)経済産業大臣からの要請

令和2年3月6日付で経済産業大臣から公益社団法人リース事業協会宛に以下のような通知が行われ、リース事業者に対して、新型コロナウイルス感染症の影響により、国内外での営業の停止や工場・店舗等の閉鎖による売り上げの大幅な減少が懸念される中小企業等への協力が要請されました。

 これにより、中小企業等からもリース事業者に対して支払い条件の変更等の要請が行いやすくなりました。

【引用:新型コロナウイルス感染症の影響拡大を踏まえた中小企業等に対するリースの支払猶予について】  
                                令和2年3月6日
公益社団法人リース事業協会                     
会長 井上 亮 殿                            
                              経済産業大臣 梶山 弘志
 
       新型コロナウイルス感染症の影響拡大を踏まえた      
        中小企業等に対するリースの支払猶予について       

  今般の新型コロナウイルス感染症の影響拡大に伴い、中小企業等における国内外での営業の停止や工場・店舗等の閉鎖による売り上げの大幅な減少などの被害が懸念されることから、特段の配慮と事業者の実情に応じた柔軟な対応に全力をあげて取り組むよう、よろしくお願いしたい。特に、下記事項について要請するので、貴協会におかれては、適切かつ迅速に必要な対応を講じるよう、よろしくお願いしたい。  

                   記  

1.リース事業者において、国内外での営業の停止や工場・店舗等の閉鎖による売り上げの大幅な減少などの被害が生じた中小企業等からの支払猶予や契約期間延長の相談があった場合には、リース対象機器等の使用可能期間を考慮しつつ、支払条件の変更等の柔軟かつ適切に対応すること。

2.上記の対応が徹底されるよう、必要な措置を講ずるとともに、貴協会所属のリース事業者に対して周知・徹底すること。

                                          以 上

(2)支払い条件の事例

 中小企業等からの要請により行ったリース事業者の支払い条件の変更について、以下のような事例がありました。

<事例>
・新型コロナウイルス感染症の影響により資金繰りの悪化したため、リース事業者に対して書面にて、2020年4月~6月の3か月間の支払猶予の要請を行った結果、当該要請に応じてもらいました。このような要請を行う場合は、必ず書面での要請をリース事業者から要求されますのでご留意ください。
・支払猶予を受けた3か月分の取り扱いとして、以下のような事例がありますが、どのような取り扱いになるかは企業の与信状況、新型コロナウイルス影響からの回復可能性の程度などを考慮し、リース事業者との交渉により決定されるものであるため、企業によって異なりますのでご留意ください。
(A)猶予期間後の通常のリース料の支払いに加えて、猶予を受けたリース料の1か月分を上乗せして支払うケースがありました。いくら業績が回復してきたとしても病み上がりの状態で2か月分のリース支払いは厳しいでしょう。
(B)支払猶予を受けたリース料を当初契約の最終支払いのあとに回し、支払猶予を受けた期間分だけ延長するケース。これであれば、毎月のリース料の支払いは、当初契約と変わらないので、(A)のケースよりは資金に余裕ができると思います。

(3)リース契約以外の割賦契約の場合も支払猶予が受けられるか

 割賦契約においても、毎月の割賦金支払いの一部猶予を受けられたケースがありました。その取扱いは上記(2)リースのケースとほぼ同じでありました。

2 最後に

 これまでに前例のない状況であることから、もし支払猶予を受けられるかどうか迷われているのであれば、まずはリース会社等にいち早く問い合わせをして、対応方法を検討しましょう。