03:中小企業再生支援協議会の利用方法と支援内容

・中小企業再生支援協議会は、中小企業の事業再生を支援し、金融機関との調整を図る機関です。
・経営者の方が自ら中小企業再生支援協議会に相談に行き利用することも可能です。
・中小企業再生支援協議会の手続費用はなく、外部専門家の費用には補助金による支援があります。

はじめまして。
事業再生支援グループメンバーの石井です。
 
 今回は、事業再生を目指す中小企業の経営者の強い味方「中小企業再生支援協議会」について、どんな組織なのか、どのような支援をしてくれるか、どのように利用できるかについて、わかりやすく解説したいと思います。

 中小企業の経営者の中には、経常利益の赤字が数期続いているのを黒字にしたい、資金繰りが苦しいので一定期間だけ金融機関への返済を利息のみの支払いにしてもらいたいと悩まれている方がいらっしゃると思います。もっとも、経営者の中には、専門家に依頼したいけど身近にそのような専門家がいない、自ら銀行にお願いすることは気が引けるなどの理由で躊躇されている方も少なくないと思います。
 このような経営者の悩みは、中小企業再生支援協議会による手続を利用することで解消できます。なぜならば、中小企業再生支援協議会は、「公認会計士・中小企業診断士等の専門家でチームを組み中小企業の事業再生を支援し、かつ、事業再生実現のために金融機関との調整を図ってくれる機関」だからです。
 今回の記事を読まれた税理士の先生方には、事業再生の相談を中小企業の経営者方受けた際に、中小企業再生支援協議会の利用を提案していただければ幸いです。
それでは以下解説します。

1 中小企業再生支援協議会とはどんな組織?

 中小企業再生支援協議会(実務上、「支援協議会」、「支援協」と省略して呼ばれることも少なくありません。以下「支援協議会」といいます。)は、中小企業に対する再生計画策定支援等の再生支援事業を実施するため、経済産業大臣から認定を受けた商工会議所等に設置される組織です。
 協議会は、全国47都道府県に1か所ずつ設置されており、事業再生に関する知識と経験を有する専門家(税理士、公認会計士、中小企業診断士、金融機関出身者など)である統括責任者(プロジェクトマネージャー)と統括責任者補佐(サブマネージャー)で構成されています。
 支援協議会による手続の内容については、「中小企業再生支援協議会事業実施基本要領」と「中小企業再生支援用議会事業実施基本要領Q&A」というかたちで公表されています。

2 どのような支援をしてくれるの?

 支援協議会による支援内容、(1)窓口相談(第一次対応)、(2)再生計画策定支援(第二次対応)、(3)計画成立後のモニタリングの3つになります。

(1)窓口相談(第1次対応)

 事業の状況が芳しくない中小企業の経営者からの申出を受けて、プロジェクトマネージャー又はサブマネージャーが相談を受けてくれます。
 相談の経緯としては、メインバンク等の金融機関が融資先に相談を進めて窓口相談に行かれる方が実務上多いですが、経営者の方から自発的に相談に行かれることについて何ら問題はありません。
 窓口相談では、プロジェクトマネージャーやサブマネージャーは、相談に来た経営者からのヒアリングや持参資料(3期分の税務申告書や直前月の試算表等)の分析により、相談企業の現在の経営状況や財務状況を把握します。そして、経営課題に対する助言を行い、かつ、その事業が利益を生み出していくことができるか(事業の収益性)を確認し、後述の再生計画策定支援(第二次対応)へ移行できるかを確認します。
 なお、再生計画策定支援に移行できない企業にも、適宜、事業改善の方法や金融機関への対応方法、弁護士への相談を助言することもしてくれます。
 また、現時点では収益性が認められなくても、中小企業診断士等の専門家の活用により、収益性を改善し、再生計画策定支援に移行することが見込まれる場合には、再生計画策定支援前に専門家による支援を実施することもあります(これを支援協議会では、「1.5次対応」といいます。)。

(2)再生計画策定支援(第2次対応)

 支援協議会は、窓口相談において、事業の収益性等の要件を充たしており、再生計画の策定を支援することが適当と判断した場合、支援協議会の支援を受けながら、再生計画の成立を目指す手続を行うことになります。この手続を、再生計画策定支援(第2次対応)といいます。

 再生計画策定支援の基本的な流れは、以下のとおりです。 

  1. 支援協議会による再生計画策定支援の開始(金融機関に通知)
  2. 個別支援チーム(公認会計士、中小企業診断士、弁護士等)の編成
  3. 財務DD(デューデリジェンス)及び事業DDの実施
  4. 事業計画・再生計画案の作成
  5. 再生計画案の調査報告
  6. 債権者会議(バンクミーティング)の開催と再生計画の成立

以上の手続を経て、相談企業の事業・財務の改善を盛り込んだ計画を策定し、全金融機関から同意を得ることで再生計画案は成立します。

詳細な第2次対応の説明は、次の記事で解説しておりますので、ご参照下さい。

(3)計画成立後のモニタリングについて

 再生計画が成立した後、支援協議会は、メインバンク等の金融機関と連携して、再生計画の達成状況のモニタリングを行います。

 時期や回数は、案件ごとに適時適切に行います。期間については、企業の状況や再生計画の内容に鑑み、再生計画成立から概ね3事業年度を目処として、必要な期間を定めるものとされています。

 モニタリングの結果、再生計画の変更が必要な場合には、中小企業経営者の求めに応じて、必要な支援を行うこととされています。

3 利用するための手続は?

 実務上、メインバンク等の金融機関から薦められて経営者の方が相談に行かれる場合が多いですが、自主的に支援協議会に窓口相談に行かれることに何ら問題はありません。

 ご相談に行かれる場合には、事前に各地の支援協議会に電話し、面談の予約を入れるとともに、当日持参する資料(3期分の税務申告書や直近の試算表等)について確認をしておくことで、効率よく相談に応じてもらうことができます。
 また、経営者ご自身だけでは手続を理解できるか不安である場合には、事業再生に精通した弁護士に代理人を依頼することが考えられます。

4 手続にかかる費用は?

 支援協議会手続における支援協議会側のコストは、国の委託事業費から支出されることになっています。そのため、中小企業者より、支援協議会側に手続費用をお支払いする必要はありません。
 専門家関する費用ですが、中小企業側で弁護士に代理人を依頼する場合には、その弁護士費用を要します(一例として、事業開始時の(着手金)と再生計画成立後の報酬(成功報酬)に分けるパターンが考えられます)。また、再生計画策定支援における財務DD・事業DD等における外部専門家の費用を要しますが、一部補助金として支援されるため、コストは比較的安価といえます。

5 どの程度利用されているの?

 支援協議会の公表している統計資料によれば、令和2年度第1四半期(令和2年4月~6月)の間における窓口相談件数は1692件であり、前年同期に比べて約1100件増加しています。今般の新型コロナウィルス感染症の影響により、利用される中小企業の数が増加しています。

 このように、支援協議会による再生手続は、窮境に陥った中小企業の経営者の方に広く使われています。

6 まとめ

 いかがでしたでしょうか。
 今回の記事は、中小企業再生支援協議会とはどんな組織なのか、どのような支援をしてもらえるのか、どのような条件で利用できるかなどの総論的な内容について解説しました。
 この記事を読まれた先生方が、事業再生についての相談を中小企業の経営者から受けた際に、支援協議会の窓口相談の利用をご提案いただけると嬉しいです。
 次回の記事では、再生計画策定支援(第2次対応)の具体的内容について解説しますので、ぜひ併せてご覧ください。

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